ロキソプロフェンの効果とは?他の解熱鎮痛成分との違いも解説

ロキソプロフェンは、熱や痛みを抑える解熱鎮痛成分の一種です。ロキソプロフェンの他にも、イブプロフェンやアセトアミノフェンなども代表的な解熱鎮痛成分の例として挙げられます。それぞれの成分の働きや使い方など、特徴は少しずつ異なります。今回はそれらの成分の違いや、市販薬を使用するときの注意点についても解説していきます。
- 監修
- 東京理科大学薬学部 嘱託教授、博士
上村 直樹先生
目次
感染症の基本のロキソプロフェンとはどんな成分?予防法
ロキソプロフェンの適応となる症状
ロキソプロフェンと他の解熱鎮痛成分との違い
市販薬を使用するときの注意点~ロキソプロフェンを含むNSAIDsを中心に~
成分の違いを理解したうえで、自分に合った薬を選ぼう
ロキソプロフェンとはどんな成分?
ロキソプロフェン(正式名称:ロキソプロフェンナトリウム水和物)は「NSAIDs」の一種です。NSAIDsとは、「非ステロイド性抗炎症薬」という意味の英語(non-steroidal anti-inflammatory drugs)の頭文字をとった略称で、「エヌセイズ」または最後の複数形を表す「s」を入れずに「エヌセイド」と呼ばれています。NSAIDsは文字通り、「ステロイド性ではない炎症を鎮める薬」という意味です。
「ステロイド」とは副腎(腎臓の上にある臓器)から分泌されるホルモンのことで、炎症や痛みを抑える作用をもっています。そのステロイドを人工的に合成した薬が「ステロイド薬」です。ステロイド薬は抗炎症・鎮痛作用がある一方で、免疫を抑制する作用があるために感染症にかかりやすくなることがあります。その他にも、血糖値を上昇させたり、骨をもろくしたりするなど、さまざまな副作用があるため、ステロイド内服薬は用法・用量や服用期間に注意を必要とすることから、医療機関で医師の診察のもと使われる薬です。市販薬では、皮膚の赤みや腫れ、かゆみの原因となる炎症を抑えるため、塗り薬の成分として配合されています。
それに対してNSAIDsは、ステロイド骨格と呼ばれる化学構造をもたない薬で、ステロイドによくみられる副作用のリスクが少ない抗炎症薬として位置付けられています。NSAIDsは市販の解熱鎮痛薬やかぜ薬など内服薬の成分としても使用されています。
NSAIDsが効く仕組み

ウイルスなどに感染すると、それに対抗するために免疫システムが働き、炎症を起こす「サイトカイン」という、細胞が生み出す生理活性物質(生体反応を制御する物質)が放出されます。炎症という現象は、感染に対抗することの他に、外傷の治癒過程などにも不可欠で重要な反応です。しかしその一方で、痛みや腫れなどの不快な症状が引き起こされます。そのような反応の一部には、発痛物質ともいわれる「プロスタグランジン(PG)」という物質が関係しています。
NSAIDsは、そのプロスタグランジンの産生にかかわる「シクロオキシゲナーゼ」という酵素の働きを阻害する成分です。NSAIDsによってシクロオキシゲナーゼが抑制されることで、プロスタグランジンの産生が抑えられ、炎症や痛みの抑制に作用します。またプロスタグランジンは体温調節にもかかわっており、その作用が抑制されることで体温が低下することから、解熱という目的でも使われています。
ロキソプロフェンの特徴
NSAIDsにはさまざまな種類があり、それぞれ特徴をもっていますが、ロキソプロフェンは、「プロドラッグ」であることが大きな特徴です。プロドラッグとは、そのままの成分自体には活性はなく、体内で代謝された後(体内で化学反応を受けた後)にはじめて活性物質に変化し、効果を発揮する薬のことをいいます。つまり、胃の中にある段階では薬として作用しません。一般的に、NSAIDsは副作用として胃腸障害が現れやすい傾向がありますが、ロキソプロフェンはそのリスクを下げる目的でプロドラッグ化されています。
「ロキソニン」とは違うの?
ロキソプロフェンと似た名称として、「ロキソニン」を聞いたことがある方は多いでしょう。ロキソプロフェンは薬の一般名である「ロキソプロフェンナトリウム水和物」の略称。一方、ロキソニンは商品名(医療用では「ロキソニン錠」、市販薬だと「ロキソニンS」)です。
薬の一般名とは、薬の有効成分である化学物質の名前のこと。それに対して商品名は、その薬を販売する企業によって付けられる名前のことです。その際、一般名に似た名前が商品名として付けられることがあり、ロキソニンはその例の一つです。
ロキソプロフェンの適応となる症状
市販薬としてのロキソプロフェンには、外用薬と内服薬(のみ薬)があり、どちらも炎症や痛みを抑える目的として主に配合されています。ここでは内服薬を中心に解説していきます。
解熱鎮痛薬の成分としてロキソプロフェンが配合される場合、適応となる症状としては、頭痛・歯痛・抜歯後の疼痛・咽喉痛・耳痛・関節痛・神経痛・腰痛・筋肉痛・肩こり痛・打撲痛・骨折痛・ねんざ痛・月経痛(生理痛)・外傷痛などの鎮痛、および、悪寒・発熱時の解熱などが挙げられます。
また、かぜ薬の有効成分としてロキソプロフェンが配合されている製品もあります。適応となる症状としてはその他に配合される成分によって異なりますが、鼻水・鼻づまり・くしゃみ・のどの痛み・せき・たん・悪寒・発熱・頭痛・関節の痛み・筋肉の痛みの緩和などが挙げられます。
ロキソプロフェンなどのNSAIDsが効きにくい症状はある?
上述のように、ロキソプロフェンは鎮痛や解熱、およびかぜの諸症状の緩和という目的で配合されることのある薬の成分です。これらのうち鎮痛については、痛みの種類(原因)によって、効きやすい痛みと効きにくい痛みに分けられます。このような傾向はロキソプロフェンだけでなく、NSAIDs全体についてもいえることです。
NSAIDsが効きやすい痛みは炎症を伴って生じる痛み(例えば、打撲や骨折などで腫れが生じているようなとき)であり、反対に神経痛などの炎症を伴わない痛みは、効果が得られにくいとされています。
ロキソプロフェンと他の解熱鎮痛成分との違い
市販薬に配合されている主な解熱鎮痛成分として、ロキソプロフェンの他に、イブプロフェンやアセトアミノフェンなどが挙げられます。それぞれの成分の違いについて解説していきます。
主な解熱鎮痛成分の違い
| NSAIDs | NSAIDsではない | |||
|---|---|---|---|---|
| 成分名 | ロキソプロフェン | イブプロフェン | アスピリン | アセトアミノフェン |
| 抗炎症 作用 | ○ | ○ | ○ | ほとんどない |
| 特徴※1 |
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※1 市販薬では適応外の内容も含まれます。
※2 効果の発現、持続時間は個人の症状、体質、代謝能力など個人差があり、服用する量によっても異なります。
(参照:厚生労働省「市販の解熱鎮痛薬の選び方」)
ロキソプロフェン以外のNSAIDsに分類される成分
ロキソプロフェン以外には、NSAIDsに分類される成分として、イブプロフェンやアスピリンがよく使われています。それぞれについて詳しく解説していきます。
・イブプロフェン
イブプロフェンもロキソプロフェンと同じように、発痛物質の産生を抑え、解熱・鎮痛・抗炎症作用を発揮します。かぜ薬の成分や痛み止めの成分としてもよく使われています。ロキソプロフェンが日本で開発されたこともあり、海外ではあまり使われていないのに対して、イブプロフェンは日本だけでなく多くの国で、処方薬や市販薬の成分として使われています。
なお、イブプロフェンは服用後の血中濃度(血液中に含まれる薬の濃度)の低下速度が緩やかであることから、持続効果が期待できるという特徴があります。ただし、効果の実感には個人差があります。市販薬では自分に合っていると感じるものを選び、用法・用量を守って使用することが大切です。
イブプロフェンを配合するベンザブロック製品
・アスピリン
アスピリン(アセチルサリチル酸)は、紀元前から解熱や鎮痛に使われていたという記録があり、歴史の長い成分です。19世紀末になり、化学的に「アスピリン」として薬剤化され、現在でも解熱鎮痛成分としてよく使われています。
他のNSAIDsとやや異なる点として、アスピリンは低用量を毎日服用した場合に血小板の凝集(結合)を抑制するように働くことから、処方薬としては心筋梗塞の予防などの目的で使われることがあります。この作用にかかわる副作用として、出血しやすくなることもあります。
NSAIDs以外の解熱鎮痛成分
・アセトアミノフェン
アセトアミノフェンは20世紀中ごろに登場し、現在でも世界で広く使われている解熱鎮痛成分です。歴史の長い薬であるにもかかわらず、作用のメカニズムはまだ十分にわかっていない点もありますが、解熱については、体温調節中枢に作用して発揮されると考えられています。NSAIDsに比べると発痛物質の産生を抑える作用が弱く、また抗炎症作用はあまりないことから、解熱と鎮痛の目的で主に使われています。
NSAIDsは胃腸障害や腎臓の機能低下などの副作用があるのに比べて、アセトアミノフェンはそれらの副作用が少ないことが知られています。
鎮痛作用はNSAIDsよりもやや弱い傾向がありますが、NSAIDsなどの他の成分と併用すると、痛みに対する感受性を下げる作用を介して、鎮痛効果がより高まるとされています。また、NSAIDsの効果が乏しいことの多い、長引く痛みにも有効なことがあります。鎮痛効果は個人差があるため、薬剤師やかかりつけ医に相談し、自分の体質や症状に合った薬を選ぶことが大切です。また、日本では小児への投与として、アセトアミノフェンが推奨されていることも大きな特徴です。市販薬においても、アセトアミノフェンは小児の適応があります。
アセトアミノフェンを配合するベンザブロック製品
※3 他の配合成分との関係で小児(15歳未満)の適応はありません。
なお、以前はアセトアミノフェンをNSAIDsに含めることもありましたが、アセトアミノフェンの作用はNSAIDsと異なる点が多いことが明らかになってきたことから、近年は区別されるようになっています。
鎮痛に関与するその他の成分
NSAIDsやアセトアミノフェンの他に鎮痛に関与する成分として、市販薬のかぜ薬にはカフェインが配合されていることがあります。
カフェインは交感神経を刺激し血管を収縮させることで、頭痛や頭重を緩和するように働きます。ただ、しっかり寝て早く治したいときは、カフェインを含まない市販薬を選ぶと良いでしょう。
カフェインを配合しないベンザブロック製品
市販薬を使用するときの注意点~ロキソプロフェンを含むNSAIDsを中心に~
解熱鎮痛薬やかぜ薬などの市販薬を使用するときには、自分がその薬の「効能・効果」に該当する症状が生じているか、また「服用してはいけない事項」に該当していないかなどを確認することが大切です。服用してはいけない事項の例としては、年齢制限が挙げられます。NSAIDsの市販薬は、15歳未満の子どもは服用することができません。
他にはどのようなことに注意すべきか、見ていきましょう。
副作用を理解する
副作用はどの薬においても起こり得るもの。解熱鎮痛薬やかぜ薬に限らず、薬を服用する際には副作用が現れる可能性を気に留めておくようにしましょう。ロキソプロフェンを含むNSAIDsで生じることのある主な副作用としては、以下のような症状や状態が知られています。
・消化管障害(胃潰瘍など)
上述のように、NSAIDsは発痛物質であるプロスタグランジン(PG)の産生を抑制することで効果を発揮します。しかし、プロスタグランジンには数種類あり、そのうちの「PGE2」には胃の粘膜を保護するという作用があります。NSAIDsの服用によって、そのPGE2の産生も抑えられてしまうため、服用後に胃や腸の粘膜がダメージを受け、潰瘍※4が起きやすくなるといわれています。
※4 潰瘍(かいよう):粘膜や皮膚の表面が炎症を起こしてくずれ、できた傷が深くえぐれたようになった状態。
・喘息
発痛物質の作用を抑えると、「ロイコトリエン」という気道の炎症を起こす物質が相対的に増えることがあります。そのため、もともと喘息が起きやすい体質の方では、NSAIDsの服用により喘息発作が誘発されることがあります。このような喘息は「アスピリン喘息」と呼ばれていますが、これはアスピリンがNSAIDsの中で最も早く登場したために、このように呼ばれるようになったもの。実際は、アスピリン以外でも副作用として喘息が起こり得るため、アスピリン喘息を患っている方は、アスピリンだけでなくほぼ全てのNSAIDsが禁忌(服用してはいけない)とされています。
・腎機能や肝機能の低下
薬の成分の多くは、腎臓または肝臓で代謝されて、尿や便に混ざって体外に排出されるため、腎臓や肝臓に負担をかけることがあります。この二つの臓器は副作用が現れやすい臓器といわれています。また、NSAIDsは腎臓の血流を低下させるようにも働くことから、その点でも腎機能の低下を起こしやすくします。
のみ合わせや過量服用(のみ過ぎ)に注意する
複数の薬を同時に服用(併用)すると、思わぬ副作用(相互作用)が現れやすくなります。薬を併用するときには、事前に薬剤師に相談しましょう。これは市販薬同士の併用に限ったことではなく、処方薬と市販薬の併用にも同じことがいえます。例えば、痛み止めの市販薬を服用しても効果が十分でなく、医療機関を受診して処方された薬が同じ成分であった場合、両方をそのまま服用すると定められている上限をオーバーしてしまい、副作用や相互作用が現れやすくなります。受診するときには、その時点で服用している市販薬を医師に伝えるようにしましょう。
薬剤師のいる薬局やドラッグストアで購入する

ここまでの注意点は、市販薬の使用に際してどれも重要なことですが、すべてを自分で確認するのはなかなか大変なことです。薬剤師のいる薬局であれば、注意点を一緒に確認したうえで、安心して薬を選ぶことができます。薬剤師に相談する際には、自分の希望も伝えると良いでしょう。例えば、かぜ薬であれば、どの症状が一番つらいか、眠くなりにくい方が良いか、また、1日の服用回数などです。
その他の注意すべきこと
・服用するときは多めの水かぬるま湯で
のみ薬は一般的に、コップ1杯程度の水か白湯(ぬるま湯)でのむとされていて、NSAIDsにもこれがあてはまります。
なお、NSAIDsは上述のように、胃腸の粘膜にダメージを与えたり、腎臓の血流を低下させたりすることのある薬ですが、服用の際に多めの水とともにのむことで、これらのリスクを抑える可能性があるとも考えられています。なお、ロキソプロフェンは上述のようにプロドラッグであるため、胃腸障害は他のNSAIDsよりも少ないといわれています。
・妊娠中は服用前に相談する
妊娠中の薬の服用は、赤ちゃんへの影響と母親本人への影響を考えて、どんな薬でも慎重に判断する必要があります。NSAIDsに関しては、流産率の上昇、胎児発育遅延、動脈管閉塞などの報告があり、特に妊娠末期の服用には注意が必要です。市販薬では、出産予定日12週以内は禁忌とされているため、妊娠中または妊娠していると思われる方は、医師、薬剤師または登録販売者に相談したうえで、薬の服用を判断しましょう。なお、授乳中の方は、授乳を避けることで服用することができる製品もあります。
・アルコール摂取時の服用は控える
アルコールは胃の粘膜を刺激するため、NSAIDsによる胃粘膜へのダメージと重なり、胃の副作用を起こしやすくする可能性があります。また、基本的な注意事項として、体調不良のときにはアルコールの摂取は控えましょう。
成分の違いを理解したうえで、自分に合った薬を選ぼう
ロキソプロフェンを中心にNSAIDs、およびNSAIDs以外の解熱鎮痛成分について解説してきました。同じ目的で使われる薬でも、異なる作用で効果を発揮するさまざまな成分があります。かぜの症状や痛みなどで困ったときには、医師や薬剤師または登録販売者に相談して、ご自身の症状や状態に適した薬を選んでもらいましょう。