知っておきたい!かぜのこと

かぜ

かぜ薬を選ぶポイント―ジフェンヒドラミン塩酸塩とは?―

ジフェンヒドラミン塩酸塩をはじめとする抗ヒスタミン成分には、鼻水や湿疹・かぶれなどのアレルギー症状やかぜにともなう鼻症状を緩和する働きがあり、かぜ薬などの市販薬に含まれています。ここでは、ジフェンヒドラミン塩酸塩の特徴や服用するにあたっての留意点、どのような場合に使用するのがよいのかなどをご紹介します。

監修
小田原医師会 
永武 毅先生

ジフェンヒドラミン塩酸塩ってどんな成分?作用と特徴

鼻症状を抑える「抗ヒスタミン成分」

かぜウイルスが鼻の粘膜に付着し感染すると炎症を起こし、ヒスタミンの放出が起こることでかぜ症状に関与するとされています。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、このヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン成分の一つです。
抗ヒスタミン成分は、鼻水やくしゃみなどの鼻症状や、痒みなどの皮膚症状を緩和する作用もあり、次に挙げるような多くの市販薬に配合されています。

  • 総合感冒薬(かぜ薬)
  • 鎮咳・去痰薬
  • アレルギー用薬
  • 眼科用薬
  • 鼻炎用内服薬
  • 外用鎮痛消炎薬
  • 外用殺菌消毒薬
  • 化膿性皮膚疾患用薬
  • アレルギーを引き起こす化学伝達物質のこと。体内に広く分布している。

鼻症状を抑えるメカニズム

ヒスタミンは、気管支や鼻粘膜、皮膚などにある肥満細胞(マスト細胞)でつくられる化学伝達物質の一種です。細菌やウイルス、食物、ダニ、花粉などの原因物質が抗原(アレルゲン)となり、その刺激によって肥満細胞からヒスタミンが放出されます。それが血管内皮細胞や筋肉、神経細胞などにあるヒスタミン受容体と結合し、神経や血管に作用することによって鼻水やくしゃみなどの鼻症状が誘発されます。かぜによる鼻炎の場合にもヒスタミンの放出が起こり、症状に関与するといわれています。
ジフェンヒドラミン塩酸塩は、ヒスタミン受容体と結合することでヒスタミンが結合するのをブロックし、引き起こされるさまざまなアレルギー症状を抑えます。鼻症状の場合は、鼻粘膜にある受容体と結合するのを阻害することによって炎症を抑え、鼻水やくしゃみ、鼻づまりを緩和します。

  • ヒスタミンを抑制することによって、中枢神経の働きも抑止するため、眠気を催す。

注意したいこと

ヒスタミンが脳の中にあるヒスタミン受容体と結びつくと、目覚めさせる働き(覚醒作用)や活性化を促す働き(賦活作用)が生じます。抗ヒスタミン成分を摂ることによって、ヒスタミンがヒスタミン受容体と結合するのをブロックするため、眠気などの鎮静作用が現れることがあります。
ですから、抗ヒスタミン成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩が配合されたかぜ薬を服用した後は乗り物の運転はしないように心がけましょう。できるだけ体をゆっくり休めることが大切です。

また、ジフェンヒドラミン塩酸塩は授乳中の方が服用してはいけない成分の一つです。服用する場合は授乳を行わないようにしましょう。さらに、前立腺肥大などで尿が出にくい方、緑内障の症状がある方は使用できませんので注意してください。

ジフェンヒドラミン塩酸塩の配合薬を選ぶポイント

ジフェンヒドラミン塩酸塩の特徴は、鼻水などの鼻症状に対し効果を発揮すること、中枢神経の働きが抑えられることにより眠気をともなうことがある点です。かぜをひいたときには、睡眠をはじめ十分な休息をとることが大切です。かぜ薬を選ぶ際には、「体を休める」という点を考えることもポイントの一つといえるでしょう。その意味では、鼻症状は睡眠を妨げる症状の一つなので、かぜ薬で早めに対処することや、睡眠を妨げる成分であるカフェインが入っていないものが望ましいといえるでしょう。

参考資料:
  • 日本薬学会編「知っていおきたいOTC医薬品 第3版」(東京化学同人)
  • OTC薬ガイドブック第3版(じほう)
  • 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「アレルギー性鼻炎ガイド」
    (https://allergyportal.jp/documents/bien_guide_2021.pdf)