知っておきたい!かぜのこと

せき

咳(せき)が止まらず、眠れない…原因と対策は?

風邪(かぜ)や感染症(急性下気道感染症など)にかかった場合などに、夜に咳(せき)が止まらず眠れないという経験をした方は多いでしょう。ここでは専門家監修のもと、夜に咳が出やすくなる原因や眠れないときの対処法などについて紹介します。

監修
小田原医師会 
永武 毅先生

なぜ夜に咳(せき)がひどくなりやすい? 考えられる原因

咳は空気の通り道・気道内にあると困る食物や痰、ほこりやウイルスといった異物を外に出し、呼吸を楽にするための体の反応です。鼻の中やのど、気管、気管支などの粘膜にこうした異物が付着すると咳センサーが反応し、刺激が神経を経由して脳にある咳中枢に伝わり、咳中枢から神経を介して横隔膜などの筋肉に到達して咳を促します。
また、気道内だけでなく気道を取り囲む筋肉の中にも咳センサーがあり、筋肉の収縮が起こると刺激され、咳が誘発されます。筋肉の収縮による咳は、咳喘息(せきぜんそく)や気管支喘息の患者さんに多く見られます。

自律神経(交感神経・副交感神経)の影響

気管支の弛緩と収縮は自律神経(交感神経・副交感神経)によって制御されています。交感神経は体を活発に動かすときに、副交感神経は体を休めるときに働いており、これらがバランスを取りながら体の状態を調節しているのです。夜間、体を休めるときに副交感神経が優位に働くと、気管支の筋肉(平滑筋)が収縮し、気道が狭くなり呼吸が抑制されます。このように昼夜で変化する自律神経の作用が、夜に咳が出やすくなる一因と考えられます。

冷たい空気や乾燥による気管支の刺激

何らかの原因で気道が敏感になり、冷たい空気や寒暖差などに反応することによって咳が起こりやすくなります。また、睡眠中の口呼吸やエアコンなどの影響でのどが乾燥し、気管支の粘膜が刺激されることでも咳が出やすくなることがあります。

咳(せき)がひどくて眠れない夜に。症状を和らげる対処法

水分を摂る

水分はのどをうるおし、通りを良くしてくれます。咳に痰が伴う場合は、水分で痰がやわらかく排出されやすくなります。
特に高齢の方は体内の水分量が少ない上に、のどの渇きを自覚しにくいので、意識して水分補給をしましょう。その際、むせないように、少しずつゆっくり飲むようにしましょう。
咳の症状がひどい場合は体力を消耗しやすいため、エネルギー補給をしっかり行うとともに、粘膜の健康維持を助けるビタミンA・B2・Cも意識的に摂りたいところです。レモネードやゆず茶などのハチミツを使った飲み物は、咳症状の改善と体力回復の両方に有用といわれており、おすすめです※1
また、熱があるときは、発汗によって水分だけでなくミネラル分も失われるため、経口補水液やスポーツドリンクなどを利用するのが望ましいといえます。

  • ※1ハチミツは乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、生後1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。

部屋を加湿する

のどの乾燥を防ぐために、加湿器を使ったり、濡れた洗濯物やタオルを部屋に干すなどして、室内の湿度を調整しましょう。

部屋の温度を上げる

冷たい空気が刺激となることもあるため、室内の温度が低い場合には、部屋を暖かくすることもいいでしょう。特に寒い時期は、加湿と併せて室温にも気を配るようにしましょう。

症状緩和のために市販薬を使う

異物や病原体から肺などの呼吸器を守ってくれる咳は、少しであれば気道の通りを良くする方法などとして健全なものといえます。しかし、強い咳や長く続く咳は気道を刺激し、気管支が収縮することでその内側に炎症を起こすことがあります。また、体力も消耗してしまい、風邪の悪化につながることもあります。体の負担を軽くするためにも、早いうちから症状を緩和することが重要です。市販薬の活用はその有効な選択肢の一つになります。

咳(せき)や痰(たん)、のどの痛みに有効な成分の例

 働き代表的な成分例
鎮咳成分脳にある咳中枢に働きかけることで、咳の発生を緩和する
  • デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物
  • ジヒドロコデインリン酸塩
  • ノスカピン塩酸塩水和物
気管支拡張成分交感神経を刺激し気管支を拡張させることで、呼吸を楽にして咳の症状をやわらげる
  • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
去痰成分気道の粘膜から分泌される粘液の量や質に影響を与え、痰を出しやすくする
  • グアイフェネシン
  • L-カルボシステイン
  • ブロムヘキシン塩酸塩
抗炎症成分炎症に関わる物質の作用を抑えることで、気道の炎症を抑え、のどの腫れ・痛みをやわらげる
  • トラネキサム酸
  • グリチルリチン酸
解熱鎮痛成分体温を調節する仕組みや痛みを伝達する仕組みに作用して発熱やのどの痛みをやわらげる働きを持つ
  • イブプロフェン
  • アセトアミノフェン

また、鼻水の症状もともなっている場合、鼻水を抑える働きを持つ抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩やd-クロルフェニラミンマレイン酸塩など)※2が配合された市販薬を利用するのがおすすめです。鼻水がのどに流れこんで気管の周りにつくと、その刺激でのどに炎症を起こし、咳がでたり、痰のようになって違和感を感じる原因になります。

市販薬を使用しても症状が良くならない場合や、2週間以上咳が続いたり、眠れないくらい咳がひどかったりする場合は早めに病院に行き医師の診断を受けましょう。喘息や、さらには重大な呼吸器疾患の可能性があります。

  • ※2服用後、眠気があらわれることがあるため、乗物または機械類の運転操作をしないようにしましょう。

知ってトクする、市販薬を選ぶポイント

眠りを妨げない市販薬にも着目

市販薬には、例えばカフェイン類のように眠気を抑える作用を持つ成分が入っているものがあります。しっかりと睡眠をとって体の免疫力を高め、体力の回復に努めるという点では、こうした眠気を妨げる成分を含まない薬を選ぶのも一つの考え方といえるでしょう。

参考資料:
  • 日本呼吸器学会:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019.メディカルレビュー社,2019.
  • 松瀬厚人「危険な咳・そうでない咳の見分け方」(文光堂, 2017)
  • 厚生労働省:試験問題作成に関する手引き(平成30年3月)