知っておきたい!かぜのこと

かぜ

  • そもそもかぜってなに?

    「かぜ」の正式な病名は「かぜ症候群」といい、普通感冒、インフルエンザ、咽頭炎など、主にのどや鼻などの空気の通り道に起こる急性炎症のことをいいます。

    かぜの原因の80~90%は○○○○

    「かぜ」の原因はさまざまですが、その80~90%はウイルスです。かぜのウイルスは200種類以上あると言われ、ウイルスの種類などによって、現れる症状もさまざまです。

    また、「かぜ」の主な原因であるウイルスは自分で繁殖することができません。そのため、かぜウイルスはヒトの細胞に侵入して、その細胞を利用して繁殖するのです。この侵入や繁殖を防ぐために炎症が起こり、様々な症状が現れるのです。

    かぜの3大タイプとは?

    かぜの症状は実に様々で、ウイルスによる影響だけでなく、個人の体力や体調によっても、症状の現れ方や感じ方に差が出てくるようです。また、その人のもっとも敏感で弱いところに症状が出てしまうこともあります。

    一概には言えませんが、症状は、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、せきなどの呼吸器症状と発熱、頭痛、筋肉痛などの全身症状に分かれます。また、これらの症状の出方には、主に鼻系・のど系・発熱系の3タイプあり、その他に、腹痛などが特徴的な多症状系があります。

    かぜかな?と思ったら自分のタイプに合ったかぜ薬を早めにのんで安静にしましょう。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
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  • かぜをひかないようにするためには、日頃の生活習慣が大切です。まずは、あなたの身近な生活習慣を見直してみましょう。

    01. 毎日ゆったりと睡眠をとろう

    睡眠不足からくる疲れとストレスは、かぜに対抗する免疫のはたらきを弱めます。できれば毎日6時間以上はとりたいものです。

    02. 偏食・暴飲・暴食をしない

    免疫の力は、カラダの状態に左右されやすいもの。カラダの調子を崩す偏食・暴飲・暴食は控えましょう。

    03. 毎日、カラダを整えよう

    適度な運動は免疫力アップにつながります。ウォーキングやストレッチをするだけでも、カラダの調子が整います。

    04. 極端な厚着、薄着をしない

    あまり厚着をしていると、寒さに対する抵抗力がつきません。といっても、無理な薄着は逆効果。ほどほどが一番です。

    05. 手洗い、うがいをしよう

    あらかじめ習慣づけておかなければ、万全の予防策とはいえません。かぜがはやり始めてからでは遅いので日頃から心がけましょう。

    06. 乾燥した所や人ごみを避けよう

    ウイルスを持っている人のせきやくしゃみの飛沫を吸い込んでうつることがよくあります。特に乾燥した所では空気中に飛び散ったウイルスが長時間生きているため、感染する確率も高くなるのです。

    07. たばこは控えよう

    たばこは血管を収縮させ、血液の流れを悪くするだけでなく、のどや肺に軽い炎症を引き起こし、ウイルスに対する抵抗力を弱めます。

    いかがでしたか?日頃から、体調管理に気をつけて健康に過ごしましょう!

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • 日頃注意していてもひいてしまう「かぜ」。もし「かぜかな?」と思ったら、私たちの体に備わっている抵抗力、免疫力、体力を高めるために、次のことを忘れずに行いましょう。

    01. 休養と睡眠をとろう

    十分な休養と睡眠をとってウイルスと闘うための体力を温存しましょう。できれば毎日6時間以上はとりたいものです。

    02. 栄養・水分補給を忘れずに

    十分な水分と、たんぱく質やビタミンC、ビタミンB群等の豊富な食事をしっかりとりましょう。

    03. 保温・保湿しよう

    部屋の温度を、冬なら20~25℃くらいにし、加湿器などを使い保湿するとよいでしょう。

    04. マスクを着用しよう

    せきやくしゃみなどの症状がある人は、他の人にかぜをうつさないように積極的にマスクをつけましょう。マスクをつけることで、自身に病原体を取り込まないようにすること、周囲へ病原体を拡散させないようにすること、どちらにも有効です。

    05. 早めにかぜ薬を利用しよう

    かぜは放っておくと、どんどんひどくなる場合があります。鼻水・鼻づまり、のどの痛み、発熱・さむけなど、ご自分の症状に合わせてかぜ薬を早めに利用しましょう。

    いかがでしたか?「かぜかな?」と思ったら、無理をせず、抵抗力、免疫力、体力を高めましょう。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
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  • 多くの方が「かぜ薬はウイルスをやっつけてくれるもの」と思っているのですが実は、そうではありません。かぜそのものを治してくれるわけではなく、体力消耗につながる過度の熱やせき、のどの痛み・鼻水などのつらい症状をやわらげてくれるものです。

    具体的なかぜ薬の成分とそのはたらきを見てみましょう。

    かぜ薬の成分とそのはたらき

    成分はたらき
    解熱鎮痛成分体温調節中枢にはたらいて熱を下げます。
    また、痛みの伝わりを抑制して痛みを緩和します。
    抗プラスミン成分炎症を抑え、のどの痛みやハレを緩和します。
    抗ヒスタミン成分ヒスタミンによって起こる鼻水、鼻づまり、くしゃみを抑えます。
    交感神経興奮成分鼻粘膜の毛細血管を収縮させ、鼻づまり、鼻水を抑えます。
    鎮咳成分せき反射を抑制して、せきを抑えます。
    気管支拡張成分気管支を広げてせきを鎮め、たんを排出しやすくします。
    去たん成分気管の粘膜の分泌を高めて、たんを排出しやすくします。

    このように、かぜ薬には、はたらきの異なるいろいろな成分が配合されています。ご自身の症状に合った成分を配合したかぜ薬を早めに服用し対処することが大切です。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
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  • かぜ薬はかぜをひいたかな?と思ったときがのみ始めるタイミングです。

    薬の服用時期の目安は食事の後30分くらいまでが「食後」、食事の前30分くらいからが「食前」、食事の後2時間くらいたってからが「食間」になります。

    薬の服用は添付文書をよく読み、定められた用法・用量を守ることが最も大切です。2回分をまとめて服用したり、効きめがないからといって1回量を増やしたりしてはいけません。また、薬はコップ1杯くらいの水かお湯で服用するようにしましょう。アルコールと一緒に服用すると強い副作用の恐れがありますので絶対にやめてください。

    市販のかぜ薬を服用する場合、5~6回服用しても症状が治まらない場合は医療機関で診てもらいましょう。また、それより前でも発疹(ほっしん)が出たり、かぜ薬を飲んでいるにも関わらず高熱が出続けている・熱が下がらないなどの場合も同様です。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
    • 効き目と睡眠で早めの回復へ
      せき・のどの痛み・鼻づまり・
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  • 免疫や体温調節が未発達な小児や、免疫力や呼吸器の機能が低下している高齢者、かぜによる胎児への影響が心配な妊婦は、特に適切なかぜの処置が重要です。

    小児のかぜで気をつけることは?

    小児のかぜの特徴は、全身症状が強く、しかもその病状の進展が早いことです。突然高熱を出したりします。特に、高熱のために大量の汗をかいた時など、小児は脱水症を起こしやすいので十分な水分補給が大切です。

    高齢者のかぜで気をつけることは?

    高齢者のかぜの特徴は、はっきりとした症状が現れにくく、しかも進行が早いことです。熱が出ていなくても、肺炎などが進行している場合もありますので、症状が軽くても医師に診断してもらうことが大切です。高齢者の場合、熱よりもむしろ食欲不振が、かぜの病態をはかる一つの目安となります。

    妊婦のかぜで気をつけることは?

    妊婦は通常、微熱が続いたり、カラダがだるくなりやすく、かぜをひいたと勘違いしがちです。そんな時、安易に薬を服用しないで、医師または薬剤師に相談してください。また、妊娠中にかぜ薬を服用する時には、主治医に必ず相談してください。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • インフルエンザと普通の風邪はどう違うのですか?

    一般的に、風邪は様々なウイルスによって起こりますが、普通の風邪の多くは、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳等の症状が中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはあまりありません。

    一方、インフルエンザは、インフルエンザウイルスに感染することによって起こる病気です。38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感等の症状が比較的急速に現れるのが特徴です。併せて普通の風邪と同じように、のどの痛み、鼻汁、咳等の症状も見られます。お子様ではまれに急性脳症を、御高齢の方や免疫力の低下している方では二次性の肺炎を伴う等、重症になることがあります。

    インフルエンザにかからないためにはどうすればよいですか?

    インフルエンザを予防する有効な方法としては、以下が挙げられます。

    • 01. 流行前のワクチン接種

      インフルエンザワクチンは、感染後に発症する可能性を低減させる効果と、発症した場合の重症化防止に有効と報告されており、日本でもワクチン接種をする方が増加する傾向にあります。
    • 02. 外出後の手洗い等

      流水・石鹸による手洗いは手指など体についたインフルエンザウイルスを物理的に除去するために有効な方法であり、インフルエンザに限らず接触や飛沫感染などを感染経路とする感染症の対策の基本です。インフルエンザウイルスにはアルコール製剤による手指衛生も効果があります。
    • 03. 適度な湿度の保持

      空気が乾燥すると、気道粘膜の防御機能が低下し、インフルエンザにかかりやすくなります。特に乾燥しやすい室内では、加湿器などを使って適切な湿度(50~60%)を保つことも効果的です。
    • 04. 十分な休養とバランスのとれた栄養摂取

      体の抵抗力を高めるために、十分な休養とバランスのとれた栄養摂取を日ごろから心がけましょう。
    • 05. 人混みや繁華街への外出を控える

      インフルエンザが流行してきたら、特に御高齢の方や基礎疾患のある方、妊婦、体調の悪い方、睡眠不足の方は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。やむを得ず外出して人混みに入る可能性がある場合には、ある程度、飛沫感染等を防ぐことができる不織布(ふしょくふ)製マスクを着用することは一つの防御策と考えられます。
    出典:厚生労働省ホームページ
    ( https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html )
  • ワクチンの効果について教えてください。

    インフルエンザにかかる時は、インフルエンザウイルスが口や鼻あるいは眼の粘膜から体の中に入ってくることから始まります。体の中に入ったウイルスは次に細胞に侵入して増殖します。この状態を「感染」といいますが、ワクチンはこれを完全に抑える働きはありません。

    ウイルスが増えると、数日の潜伏期間を経て、発熱やのどの痛み等のインフルエンザの症状が出現します。この状態を「発病」といいます。インフルエンザワクチンには、この「発病」を抑える効果が一定程度認められていますが、麻しんや風しんワクチンで認められているような高い発病予防効果を期待することはできません。発病後、多くの方は1週間程度で回復しますが、中には肺炎や脳症等の重い合併症が現れ、入院治療を必要とする方や死亡される方もいます。これをインフルエンザの「重症化」といいます。特に基礎疾患のある方や高齢の方では重症化する可能性が高いと考えられています。インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「重症化」を予防することです。

    インフルエンザワクチンの接種はいつ頃受けるのがよいですか?

    日本では、インフルエンザは例年12月~4月頃に流行し、例年1月末~3月上旬に流行のピークを迎えますので、12月中旬までにワクチン接種を終えることが望ましいと考えられます。

    注意 インフルエンザワクチンの接種を受けることが適切でない方や注意が必要な方もいますので、ワクチン接種を受けるときは、かかりつけのお医者さんとよく相談してください。

    出典:厚生労働省ホームページ
    ( https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html )
  • 「かぜ」の正式な病名、ご存知ですか?
    正式には「かぜ症候群」といい、上気道(のど・鼻など)の急性炎症のことを指します。症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまり・のどの痛み・せき・たんなどに加え、発熱・頭痛などの全身症状もあらわれます。今回は、実は間違っていた、勘違いしていた「かぜ」に関する情報をお届けします。

    かぜをひいたらお風呂ってやっぱりダメ?

    「かぜをひいたらお風呂はダメ!」というのが、昔は常識でした。実は、かぜ気味でも熱がなく元気であればお風呂に入ってもかまわないのです。一日を通して37.5℃以下でしたら、湯冷めに気をつけてお風呂に入って良いでしょう。お風呂の蒸気はのどに適度の湿り気を与え、皮ふを清潔にして新陳代謝を高め、さっぱりすることでぐっすり寝られるなど、お風呂に入ることの利点が最近では見直されています。

    汗をかくと熱が下がる?

    たまに、熱を下げるために汗をかかせようと、熱が高い子供に厚着をさせている方がいます。解熱剤を使った後など、熱が下がるときに汗をかくことは事実ですが、無理に汗をかかせても熱が下がるわけではありません。つらいだけでなく、熱がこもってますます熱が上がったり、あせもの原因になったりします。一方、熱がでるとき寒がってぶるぶると震えることがありますが、この時には、毛布でくるんであげたり、湯たんぽを使ったりして温めてあげましょう。

    点滴をして栄養をつける?

    ときどき、ご飯が食べられないから点滴をしてほしいと、点滴に対して過大な期待をよせている方がいます。通常、病院で行われている点滴は100kcal程度のカロリーしか含まず、缶ジュース1本分にすぎません。ですから、点滴がご飯代わりになることは期待できないでしょう。しかし、点滴の中身はイオン飲料に近いものですから、吐いて下痢をしているような場合で、イオン飲料も飲めないような場合には非常に有効です。

    かぜは人にうつすと治る?

    これは全く医学的根拠のない事です。
    かぜが治るのは体の中にインターフェロンというかぜのウイルスが増殖するのを抑える物質ができ、リンパ球などの免疫担当細胞がかぜのウイルスをやっつけてくれるからです。Aさんが周りの人にかぜをうつして、その人にかぜの症状がでる頃には、Aさん自身は発症から既に時間が経過し、治りかけのことが多いものです。そのため、「かぜは人にうつすと治る?」という間違ったことが言われるようになったのかも知れません。 

    水まくらで熱を下げる?

    熱がでるとよく水まくらを使う方がいます。しかし、実際、水まくらを使ってもそれほど熱は下がりません。頭の後ろやおでこを冷やしたくらいでは、全身の熱はなかなか下がってくれないものです。もし、冷やすことで熱を下げるのであれば、脇の下や股のあたりなど数ヶ所を同時に冷やさなければ効果は期待できないでしょう。

    かぜの時に注射をすると早く治る?

    残念ながら、注射をしたからといって、かぜが早く治るということはありません。かぜの場合、対処療法といって鼻水やのどの痛み、熱などのかぜの症状を和らげる錠剤などの内服薬を使うことが一般的です。また、患者さんの状態によっては、かぜが悪化し、肺炎などの合併症を起こしてしまうことがあります。そのような場合には、医療機関で注射や点滴といった処置を行うことがあります。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • 昔から「かぜは万病のもと」といわれています。 たかがかぜと安易に考えて放っておくと、思わぬ病気の原因になったり、下がった抵抗力のせいで他の病気にかかりやすくなってしまいかねませんので、油断は禁物です。さて、その“かぜのひきはじめ”に効果を発揮するツボをご紹介いたします。

    かぜによる くしゃみ、鼻水

    迎香

    場所:鼻孔のすぐ外側の小鼻の横にあります。
    手技:迎香(げいこう)のツボに中指の腹をあてて、15回くらいゆっくりと押しながら小さな◯を描くように指圧します。

    かぜによる さむけ

    大椎

    場所:首を前に倒したときに、えり首のところに飛び出る骨のすぐ下にあります。
    手技:大椎のツボ周辺の皮ふを、ヘアードライヤーや使い捨てカイロなどで温めます。

    かぜによる のどの痛み、せき

    天突

    場所:首の付け根の鎖骨と鎖骨の間にあります。
    手技:まず、背中の首位の皮ふをヘアードライヤーや使い捨てカイロなどで温めて、天突のツボを人さし指で指圧します。のどにまっすぐに押すと苦しいので、鎖骨の裏側をおすつもりで行います。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • 正しい手洗いの方法

    正しい手の洗い方
    出典:厚生労働省 啓発資料より一部抜粋
    ( https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00094.html )

    正しいうがいの方法

    コップに水や緑茶(殺菌作用があるといわれています)、または希釈したうがい薬をコップに用意します。これを使って3回にわけてうがいをします。

    1回目は口の中の食べかすなどを取る目的で、口に含んで強くうがいします。(いわゆる“クチュクチュペッ”)
    2回目は、上を向いて、のどの奥まで届くように15秒程度うがいします。(いわゆる“ガラガラペッ”)
    3回目はもう一度“ガラガラペッ”をします。

    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • 新型コロナウイルスはどう感染する?

    新型コロナウイルスは、一般的には①飛沫感染、②接触感染で感染します。
    閉鎖した空間で、近距離で多くの人と会話する環境では、咳やくしゃみなどの症状がなくても感染を拡大させるリスクがあるとされています。

    「①飛沫感染」とは
    感染者の飛沫(くしゃみ、咳、つばなど)と一緒にウイルスが放出され、他の人がそのウイルスを口や鼻などから吸い込んで感染すること。WHOは、一般に、5分間の会話で1回の咳と同じくらいの飛沫(約3,000個)が飛ぶと報告している。
    「②接触感染」とは
    感染者がくしゃみや咳を手で押さえた後、その手で周りの物に触れるとウイルスがつく。他の人がそれを触るとウイルスが手に付着し、その手で口や鼻を触ることにより粘膜から感染すること。WHOは、「新型コロナウイルスは、プラスチックの表面では最大72時間、ボール紙では最大24時間生存する」としている。

    感染を予防するためには?

    感染を予防するためには、手洗い・うがいなどの基本的な感染予防の実施や、不要不急の外出の自粛、「3つの密」を避けること等が重要です。
    「3つの密」とは、①密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、②密集場所(多くの人が密集している)、③密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や共同行為が行われる)で、感染を拡大させるリスクが高いと考えられています。

    • 人と人との距離をとる(Social distancing:社会的距離)
    • 外出時はマスクを着用する
    • 家の中でも咳エチケットを心がける
    • 家やオフィスの換気を十分にする
    • 十分な睡眠や栄養などで自己の健康管理をしっかりする など

    自己のみならず、他人に感染させないように徹底することが必要です。

    普通のかぜ、新型コロナウイルス感染症、インフルエンザの違いは?

    特にひき始めは一般のかぜと新型コロナウイルス感染症は区別がつかないといわれています。
    普通のかぜは、発症から3~4日目までをピークによくなっていくのが一般的です。
    新型コロナウイルス感染症は、症状が7日前後と長く続くことが多く、その後約80%の人が自然によくなると考えられます。
    症状としては熱がそれほど高くなくてもだるさが強く出たり、一部の人では嘔吐・下痢といった症状がおこることがあります。

    また、約20%の人は肺炎を合併し入院が必要となります。
    さらに肺炎に進展した人の一部が重症化し、集中治療や人工呼吸が必要となります。
    かぜやインフルエンザでは、肺炎等の入院を要する状態に至るのは稀なことから、新型コロナウイルス感染症は肺炎を合併する率が高いことがわかります。

    一方で、無症状であったり、嗅覚・味覚に異常が出る人が存在していることも特徴です。
    また、人によっては、症状が出て間もなく急激に悪化することもあります。
    特に高齢者や基礎疾患のある人、妊娠中の人は肺炎を合併しやすく、喫煙者は非喫煙者と比較して新型コロナウイルスへの感染で重症となる可能性が高いことが明らかになったことなどが報告されているので注意が必要です。
    また、現時点では疫学研究が不足しているため、新型コロナウイルス感染症との因果関係は不明ですが、人によっては、急性期症状が遷延する(後遺症が出る)こともわかってきました。
    寒い季節になると流行するインフルエンザは、高い熱と関節痛や筋肉痛などの全身症状が先行する特徴がありますが、症状だけでは新型コロナウイルス感染症との区別が難しい場合もあります。

    普通かぜと新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの違い

    症状普通かぜ新型コロナウイルス感染症インフルエンザ
    伝染性あまり強くない
    (飛沫または接触感染)
    非常に強い
    (飛沫または接触感染)
    強い
    (飛沫または接触感染)
    発症ゆっくりゆっくりまたは急激な悪化急激
    罹病期間7~10日7~10日前後約1週間
    発熱あっても38℃くらいまで
    (微熱程度のこともある)
    37.5℃以上の発熱が
    4日以上続くことがよくある
    高熱38℃~40℃
    頭痛軽い場合によってある強い
    強い嗅覚・
    味覚異常
    ほとんどない場合によってあるほとんどない
    全身の痛みない~軽い場合によってあるよくある(強い)
    だるさ・脱力感軽い場合によってあるよくある(強い)
    鼻水・鼻づまりよくあるほとんどない場合によってある
    せき軽いよくある
    (途切れず続く乾いたせきが多い)
    よくある(強い)
    息切れほとんどない肺炎を合併すると息苦しさ、
    呼吸困難などおこることがある
    ほとんどない

    ※重症化例では数週間に達することもある。また、治療や療養が終わっても一部の症状が長引く人がいることがわかってきている。

    かぜ薬と新型コロナウイルス感染症の治療薬

    新型コロナウイルス感染症の治療薬の研究が進んでいますが、確立された治療法・治療薬も限られており、治療薬は開発が進められているところです。

    市販のかぜ薬はウイルスを排除するのではなく、のどの痛み、発熱といった症状を緩和する対症療法の薬です。

    かぜかなと思ったらかぜ薬をのんでもいいの?

    「かぜかな?」と思っても「もし新型コロナウイルス感染症だったら?」と不安に思われる人も多いと思います。特にひき始めは一般のかぜと新型コロナウイルス感染症は区別がつかないことが多いですが、かぜを疑う場合は、症状が強い際に必要に応じてかぜ薬を服用することもおすすめです。
    また、かぜは自分の体力・免疫力で治すしかないので、体力を消耗する症状には早めに対処することが効果的です。

    さらにこの期間は受診ではなく自宅療養がすすめられています。不要な外出を控え、毎日体温を測り、記録をしておくことが大切です。
    通常のかぜであれば3~4日をピークに軽快していきます。
    5~6回かぜ薬を服用することで症状がよくなってくるものですが、効果が見られない場合は、かぜではない可能性が考えられるので、服用を中止し医療機関に相談しましょう。冬には、季節性インフルエンザ等、発熱や咳を起こす感染症が流行しやすくなります。こうした感染症と新型コロナウイルス感染症の症状は非常に似ていますので、かかりつけ医等身近な医療機関に電話等で相談してください。
    また、新型コロナウイルス感染症の重症化が心配される高齢者、基礎疾患のある人、妊娠中の人などは自己判断での服用はせずに厚生労働省の注意喚起に従い、かかりつけ医に相談しましょう。

    新型コロナウイルス感染症の大半はかぜのような軽い症状のまま自然に治ってしまうともいわれていますが、次のいずれかに該当する場合はまずはかかりつけ医等身近な医療機関に電話で相談してください。

    • 息苦しさ(呼吸困難)、強いだるさ(倦怠感)、高熱等の強い症状のいずれかがある場合。
    • 重症化しやすい人で、発熱や咳などの比較的軽いかぜの症状がある場合。
      (※高齢者、糖尿病、心不全、呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)等の基礎疾患のある人や透析を受けている人、免疫抑制剤や抗がん剤等を用いている人および妊娠している人)
    • 上記以外の人で発熱や咳など比較的軽いかぜの症状が続く場合。
      (症状が4日以上続く場合は必ず相談してください。症状には個人差がありますので、強い症状と思う場合、解熱剤などをのみ続けなければならない人もすぐに相談してください。)
    参考資料:
    • 厚生労働省ホームページ 新型コロナウイルス感染症について
      (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html)
    • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 第5.2版 厚生労働省
      (https://www.mhlw.go.jp/content/000815065.pdf)
    • 新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド_ver2(日本医師会)
    • 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療所・病院のプライマリ・ケア初期診療の手引きver.2.1(日本プライマリ・ケア連合学会)
    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
    2021年11月1日更新
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  • 01かぜと花粉症。鼻の症状が似てるけどどう違うの?

    かぜと花粉症は原因が違います。
    かぜによる鼻水、鼻づまりは、かぜのウイルスが鼻の粘膜に感染することで、炎症が起きます。一方、花粉症は花粉が鼻の粘膜に付着して、花粉の成分に対するアレルギー反応が原因で炎症が起きます。実は鼻症状についても違いがあります。かぜのひき始めは、水っぽい鼻水、くしゃみ、鼻づまりがあって花粉症と区別がつきにくいですが、数日たつとくしゃみが治まってきて鼻水がドロッとしてきます。花粉症では水っぽい鼻水とくしゃみがずっと続きます。その他、目のかゆみがあれば花粉症、実際に熱が出ていればかぜを疑うというように他の症状があるかどうかでも判断することができます。

    02花粉が飛ぶ時期に、かぜか花粉症かわからなかったらどうすればいい?かぜ薬をのんでもいいの?

    自分で正確に判断するのは難しいですが、少しでもかぜかもしれないと思われるのであれば、かぜ薬をのんでもかまいません。
    鼻水、鼻づまりを緩和する成分が含まれているかぜ薬であれば、花粉症であっても鼻の症状はある程度緩和されます。しかし、かぜは、一般に7~10日で回復するものであり、かぜ薬は長期にのみ続けるものではありません。鼻症状が長く続く場合は花粉症の可能性があるので、かぜ薬の服用は中止しましょう。また、鼻症状以外にかぜの症状が全くない場合は鼻炎薬を服用する方がよいでしょう。

    03花粉症と新型コロナウイルス感染症はどう違う?

    かぜと新型コロナウイルス感染症は初期の症状がよく似ており、区別がつきにくいと思います。同じように花粉症とも区別がつかない場合も考えられます。
    新型コロナウイルス感染症は、だるさや微熱といったかぜに似た症状が見られることが多く、特に37.5°C以上の発熱が4日以上続いたり、息苦しさ等が見られることが特徴です。また、全身症状が軽くても、嗅覚味覚障害が起こることもあります。花粉症は鼻症状や目のかゆみなどが特徴ですが、中にはだるさなどがある人もいます。ただ原因となる花粉の飛散は、その日の天候によって変化しますので、日によって症状に差が見られるというのも花粉症の特徴です。症状が悪化する場合は新型コロナウイルスの感染が疑われるかどうか、厚生労働省のHPなどで相談の目安を確認し、保健所などに設置される相談センターや医療機関に相談しましょう。

    参考資料:厚生労働省 2020年11月10日時点
    (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00001.html)

    04花粉症が増えている理由は?

    近年、花粉症が増えている背景には、地球温暖化などによるスギ花粉の増加や、食生活の変化などが関係していると言われています。そして、昔と比べると日本の環境が清潔になって病原体との接触が減ったために体の免疫機能がよりアレルギーを起こしやすい状態になっていることも原因と考えられています。また、アレルギー症状は自律神経と深く関わっているため、様々なストレスによって自律神経の調節が乱れ、花粉症の症状も出やすくなります。

    05花粉症になる人とならない人は何が違うの?

    遺伝的にアレルギー体質を持っているか否かが、ひとつの分かれ目になります。
    それに加えて、食生活を始めとする日常生活の要素が深く関わっています。また、花粉を吸いこむ量が多ければなりやすく、少なければ発症しません。そのため、花粉が多く飛んでくるところに住んでいる人は花粉症になりやすいと言えます。スギの木の少ない都市部でも花粉症の人が多くいるのは、アスファルトで舗装された場所が多いため、地面に落ちた花粉が吸収されず、風で何度も飛散してしまうためと思われます。

    06お年寄りに花粉症が少ないのはどうして?

    戦後10余年が経った1960年代になるまで、国内で花粉症は見つかっていませんでした。
    現在のお年寄りに花粉症の人が少ないのは、スギ花粉の飛ぶ量が少なかっただけでなく、当時の日本人の食生活や住環境がアレルギー体質になりにくくしていたからです。また、年をとると免疫の力が低下するため、花粉に対しても敏感に反応しなくなり、若いころほどひどくなくなる場合もあるのです。現在壮年層の花粉症の方はそのまま花粉症を老年期に持ち越しますので、今後はお年寄りの花粉症が増えてくる可能性もあります。

    07ある年、突然花粉症になるのはどうして?

    花粉が体内に入ってもすぐに花粉症になるわけではありません。
    アレルギー体質の人は、花粉が入ってくると、これに対応するために抗体(IgE)を作ります。この抗体の量が一定の水準に達すると発症します。そのため、これまで人生で吸い込んだ花粉の量が関係してきます。花粉が多い地域では子供の発症が多いですし、これまで花粉の飛散しない地域に住んでいた人は花粉の飛散する地域に引っ越してしばらくすると発症することがあります。一般には大量に飛散した年に新たに発症する人が多いと考えられます。

    08花粉症って予防できるの?

    花粉を浴びないようにすることが一番の予防になります。花粉から身を守り、シーズンを乗り切るための予防法をご紹介します。

    • 風の強い晴れた日は外出を控えめにしましょう。特に昼前から午後3時ころまでが花粉の飛ぶピークです。この時間帯だけでもなるべく室内にいましょう。
    • 顔の周りを守るため、マスク、メガネやゴーグル、スカーフ、帽子を利用しましょう。
      衣服は花粉がつきにくいスベスベした素材のものを選ぶとよいでしょう。
    • 家に入る前は玄関先で、衣服や髪、持ち物についた花粉をはらいましょう。
    • 帰ったら、手・顔・目・鼻を洗い、うがいをしましょう。

    09花粉症って治るの?

    いったん花粉症になってしまうと自然には治らないので、花粉を浴びる限り症状は出ます。でも花粉がない地域に引っ越して長くたつと反応は弱まります。花粉のエキスを少量ずつ体内に入れて体を順応させる免疫療法は、一部の患者さんでは完治することもあります。この免疫療法は、医療機関で行われていますので、興味のある方は近くの耳鼻科などでご相談することをおすすめします。

    10花粉症を起こす植物には何があるの?花粉が飛ぶ時期に違いはある?

    日本で一番多い花粉症はスギ花粉症、次いでヒノキ花粉症です。
    スギは2月から4月下旬まで、ヒノキは3月初旬から5月初旬が飛散期です。そのあとイネ科の花粉が6月半ばまで飛散し、そのあと秋にヨモギ、ブタクサの花粉が飛散して9月末ぐらいまで続きます。スギ花粉は11月にいったん寒くなったあと暖かくなった日に少量飛散することがあります。
    北海道や東北では5〜6月にかけてシラカバの花粉が飛散することも知られています。

    主な花粉の飛散時期

    監修:近藤 健二先生(東京大学医学部附属病院 耳鼻咽喉科 准教授)
  • かぜなどの感染症は、身近な体調不良の代表格です。微熱など体の不調を感じたとき、以前なら少し様子を見ている人も多かったと思いますが、今日では新型コロナウイルス感染症の不安もあり、大きな悩みの種となりえます。少しでも不安を減らすためには予防が重要です。
    今回はかぜや新型コロナウイルスをはじめ、さまざまな感染症の予防にも役立つポイントを解説します。日々の感染対策に役立ててください。

    感染症の基本の予防法

    感染症は、ウイルス・細菌などの病原体が体内に侵入・増殖することで症状を引き起こす疾患です。感染は次の3つの要因すべてがそろうことで起こるとされています。

    • 病原体(感染源):感染症を引き起こすウイルス・細菌など
    • 宿主:病原体が侵入し、増殖していくことが可能な場所(人体)
    • 感染経路:病原体が宿主の体へ侵入していくためのルート・方法

    感染対策としては、これらの要因のうち1つでも取り除くことが重要で、「病原体の排除」「感染経路の遮断」「宿主の抵抗力の向上」の3つが対策の柱です。なかでも感染経路を遮断することが、感染拡大防止のために最も重視される対策です。

    日常生活において、注意を要する主要な感染経路は次の3つです。

    (1)接触感染および経口感染
    手指・食品・器具を介して病原体が広まる
    (2)飛沫感染
    咳・くしゃみ・会話などに伴うしぶきによって病原体が広まる
    (3)空気感染
    咳・くしゃみなどによって放出される飛沫核(しぶきより小さいもの)として広まり、空中を浮遊しながら空気の流れによって飛散する

    今日励行されている手洗い・消毒などの手指の衛生確保やソーシャル・ディスタンス、「3密」の回避などは、こういった感染経路の遮断を念頭に置いているものです。

    手洗い

    手洗いはかぜをはじめとした一般的な感染症対策において、有効な方法です。汚れとともに病原体を洗い流し、手を介した接触感染を防ぎます。

    手洗いはより丁寧に、より頻回に行うことでウイルスの除去効果が高まります。石けん・ハンドソープを使って10秒間のもみ洗いをした後に流水で15秒すすいだ場合、手洗いをしないときに比べて手に残るウイルスの数は約0.01%にまで減少し、同じことをもう1回繰り返した場合(2回の手洗い)には約0.0001%にまで減少するとされています。

    手洗い残存ウイルス
    手洗いなし約100万個
    石けんやハンドソープで
    10秒もみ洗い後
    流水で15秒すすぐ
    1回約0.01%(数百個)
    2回(繰り返す)約0.0001%(数個)

    (森功次他:感染症学雑誌、80:496-500,2006 から作成)

    手洗いを丁寧に行うことで十分にウイルスを除去することができるので、手洗い後はアルコール消毒液などを使用しなくても問題ないといわれています。清潔なタオルやペーパータオルでよく拭き取って乾かしましょう。
    手洗いは外出先から帰ったとき、咳・くしゃみの後や鼻をかんだとき、食事の前後などに行うのがおすすめです。また、手洗いの際には図にあるような汚れの残りやすい部分に注意して洗うと良いでしょう。

    辻明良「微生物学・感染制御学」メヂカルフレンド社 を参考

    手指の消毒

    手洗いがすぐにできない状況では、アルコール消毒液を用いた消毒も有効です。
    新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスは脂質の「膜」をまとっており、アルコールはこの「膜」を壊すことによってウイルスを無毒化してくれます。
    新型コロナウイルスを想定した手指の消毒液としては、濃度70%以上95%以下のエタノールが推奨されています。ただし、入手が困難な場合には濃度60%台のものでもある程度有効であるため、代用可能とされています※1
    市販の消毒液を購入する際には、品質・有効性・人体への安全性が確認された「医薬品」「医薬部外品」と表示のあるものを選びましょう。手指の消毒は、医薬品や医薬部外品にのみ効能が認められているためです。また、アルコールに対して肌が過敏な人はエタノールの利用を避けましょう。

    • ※1厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う食品添加物製剤たる高濃度エタノール製品の使用について(改定(その2))」令和2年4月22日
      http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20200422_02.pdf

    うがい

    うがいも一般的な感染症対策として広く採用されており、口の中を洗浄したり、うがい薬の作用でのど等を殺菌したりすることにより、かぜなどの感染症予防に役立てられています。
    うがいの実施にあたっては、まずしっかりと口腔内を洗い流すよう意識しましょう。うがい薬を用いない「水うがい」でも効果が得られることがわかっています。最初に、水を口に含んでブクブクとすすぐ(水を吐き出す)うがいをし、次にあごを上にあげてガラガラするうがいを十分に行うことが理想的です。

    マスク着用などの咳エチケット

    咳エチケットとは、ウイルスなどの病原体を他人に感染させないよう、咳・くしゃみをする際にマスクの着用またはティッシュ、ハンカチ、用意がない場合には服の袖などで口・鼻をおさえることです。

    咳エチケットでマスクの着用は非常に役立ちます。自身に病原体を取り込まないようにすること、もし感染していた場合に周囲へ病原体を拡散させないようにすること、どちらにも有効です。

    Ueki, et. al.: mSphere 5(5): e00637-20, 2020.を参考

    また、マスクの着用によって吸気がある程度加湿されるため、鼻粘膜の機能維持を助けることにつながると考えられます。鼻粘膜に備わっている異物の防御機能は、乾燥した空気が通過し続けることで低下が見られるからです。なお、マスクがないときは、タオルなど口を塞げるものでもある程度飛沫を防ぐことができます。
    会話の際はマスク着用を心がけましょう。

    外出時は重ね着で体温調節

    室内外の大きな温度差は、自律神経の乱れにつながり、体温調節機能や血行のトラブルのほか、免疫機能の低下などにつながると考えられています。これらを踏まえ、寒くなる季節の外出は衣服の工夫も必要といえるでしょう。

    衣服は、重ね着をすることによって保温性のアップに役立ちます。絹やウール製のものを着るようにすれば、湿度の調整もできて快適さも確保できるでしょう。また、外側に通気性の少ない衣服を重ねることで、衣服内の温められた空気を外に逃げにくくすることができます。
    しかし過度な厚着は、汗をかくことによって保温力の低下や健康を損なうことにつながる恐れがあります。濡れた肌着は皮膚から熱を逃がすことを助長させるため、かえってかぜをひくなど健康被害のリスクを高める可能性があるのです。単なる厚着ではなく、脱ぎ着することによって調整がしやすい重ね着の服装を心がけると良いでしょう。

    適度な湿度と換気

    ウイルスへの感染対策として室内の環境、特に湿度と換気を考慮することも大切です。
    空気が乾燥している環境下では、鼻や喉など気道粘膜が持つ防御機能が低下するため、ウイルスなどに感染しやすくなります。特に新型コロナウイルスは、湿度40%未満ではウイルスの生存率が高い可能性があるようです※2。かぜやインフルエンザなど他の感染症のことも考慮すると、室内では加湿器などを使って湿度50~60%に保つことが望ましいといえるでしょう。
    一方で、加湿のために部屋の窓・出入り口を閉め切ったままにするのは注意が必要です。ウイルスなどの病原体が外出先で体に付着し、知らず知らずのうちに室内へ持ち帰ってしまうことも。こまめな換気を行い、対策しましょう。
    台所・洗面所等の換気扇を常時稼働させることで、ある程度の換気量を確保できます。窓を開けて換気を行う場合は、対角線上にあるドアや窓を2ヶ所以上開けるか、窓が1つしかない場合は部屋のドアを開けて扇風機を窓の外に向けて運転させると効果的に換気できます。

    ただし、外の気温・湿度が低い冬場などは、換気によって室内の温度・湿度が低下すると、感染のリスク増加やその他の体の不調の要因となる可能性が。窓を開けて外気を取り込む換気が難しい場合には、高性能エアフィルター(HEPAフィルター)によるろ過式の空気清浄機を併用すると、空気中のウイルス量を低減させる助けになると期待されています。

    • ※2厚生労働省「冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について」2020年11月27日付
      https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf

    こまめな水分補給

    マスクを着用していると、汗をかいたり、呼吸数や体感温度が上昇するなど体に負担をかけることがあります。喉が渇きを感じる前にこまめな水分補給を心がけましょう。
    人体の水分の占める割合は平均で成人体重の約60%。そのうち約35%が血液やリンパ液等です。汗などで体内の水分が不足すると、血液をはじめとする体液の濃度が上がる、血流の循環が悪くなるなど、体のさまざまなところに影響が出てしまいます。
    さらに体を病原体から守るためにも、水分補給を欠かせません。鼻や喉の粘膜には異物を排除する防御機能が備わっており、この機能は鼻腔の線毛運動と粘液の量によって支えられています。湿度が低い環境では防御機能が低下する一方、適度に水分を摂取することで、これらの機能低下が抑制され、防御機能を維持できる可能性が報告されています。水分摂取により体の水分を保つことは重要なのです。

    新型コロナやかぜ(風邪)をはじめ、ウイルスや細菌に感染しにくい体作りと免疫力アップのポイント

    体を冷やさない

    体が冷え過ぎると免疫力の低下に繋がることがあります。
    冷えの要因として、血行不良が挙げられます。血液は熱の運搬にも関わっており、血行が悪化すると「冷え」をもたらすと考えられます。体の代謝・免疫機能は、深部体温が約37℃のとき最も効率良く働くとされていますが、体温が1℃下がると体内酵素の働きが50%、基礎代謝が12%、免疫力は37%低下するという説も。
    湯船にゆったりと浸かる、冷房の効いた部屋ではひざ掛けを利用するなど、体を冷やさない工夫を心がけましょう。

    十分な睡眠

    睡眠不足は、脳だけでなく身体のさまざまな機能に対して影響をもたらすストレスの要因に。また、慢性的な睡眠不足の人では、免疫機能が低下している報告もあります。実際、睡眠時間の短さがかぜを発症する可能性を高めるという研究もあり、1日の睡眠時間が6時間未満の人は、睡眠時間が6時間より多い人に比べてかぜを発症するリスクが高かったことが報告されています※3
    睡眠時間はもちろんのこと、生活リズムや食習慣、睡眠環境を改善し、睡眠の質を上げて、心身ともにしっかり休養できるよう、努めましょう。

    • ※3Prather, et. al: Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. SLEEP 38(9): 1353-1359, 2015

    バランスが良い食事

    偏った栄養摂取や栄養不足は、体力や免疫機能の低下などにつながり、不調の要因となることも。
    タンパク質は、炭水化物、脂質とともにエネルギーのもとになる栄養素の一つで、欠乏すると体力や免疫機能の低下などにつながるとされています。
    また、活性酸素は免疫機能の低下などを引き起こすとされていますが、ビタミンA・ビタミンC・ビタミンEなどの抗酸化ビタミンは活性酸素の働きを抑える働きがあります。これらの栄養素をしっかり摂取し、栄養バランスを意識しましょう。

    免疫の要、腸にも注目

    腸は、全身の免疫細胞のうち約60%が集まる最大の免疫器官です。腸内には1000種以上・100兆個もの腸内細菌が存在しています。
    常在している腸内細菌は、食べ物と一緒に入ってきた病原体を排除してくれる働きがあります。さらに、小腸の細胞から分泌される抗菌ペプチドとよばれる物質は、病原菌を排除する働きがあります。このように、腸や腸内細菌が体の健康にとって重要なものであることが判明しています。
    多くの腸内細菌が生存している大腸には、分厚い粘液の壁(バリア)が備わっており、細菌が腸の組織へ接触・侵入するのを防いでいます。この粘液の分泌には酪酸菌が生み出す酪酸(らくさん)などの短鎖脂肪酸が関わっています。つまり、腸内細菌は腸自体の機能を守り、さらに全身の健康維持にも大きく貢献する存在なのです。
    腸内環境を整えるためには、善玉菌のエサとなる食物繊維などを含む食材を意識的に摂取したり、発酵食品で善玉菌そのものを摂取するといった方法があります。ただし、酪酸菌を含む食品は少なく、整腸剤やサプリメントなどを活用するのも良いでしょう※4)。

    • ※4市販されている生菌整腸剤の効能は主に整腸作用であり、気道感染症など特定の疾患に対する予防・治療を目的とするものではないことに注意が必要です。

    適度な運動

    心身の健康に欠かせない運動。適度な運動の継続により、免疫機能に良い影響を与えることが示されています。また運動により、体力や筋力、全身持久力の改善や日常生活動作の維持改善を図ることができます。

    運動には、有酸素運動やレジスタンス運動(筋力トレーニング)、ストレッチ(柔軟体操)などがあります。日常的にできる簡単なレジスタンス運動と有酸素運動もありますので、ぜひ取り入れてみてください。

    • 有酸素運動:音楽を聴きながらのステップ(エクササイズ)や、ウォーキング・ジョギングなど
    • レジスタンス運動:上体起こしや足上げ、椅子スクワット等の反復運動

    コラム:口腔ケアがインフルエンザ予防に役立つ!?

    インフルエンザへの感染予防として、口腔ケアの重要性に注目が集まっています。口の中にすむ細菌が出す酵素がインフルエンザウイルスの増殖に関係しているためです。
    詳しく説明すると、歯周病菌が出すタンパク質分解酵素は、ウイルスの侵入を手助けしてしまいます。さらに、口の中の細菌が食道・胃を経由して腸内までたどり着き、腸内細菌のバランスを乱して病気の原因となる可能性も。また、唾液にはIgA抗体が含まれていて、ウイルスなどの異物を排除する役割を持ちますが、口が不潔な状態だと、病原体の数が多すぎるため防御しきれなくなってしまいます。ウイルスの増殖を防ぐためには、口腔内細菌を減らすこと、つまり口の中を清潔に保つことが重要です。
    口腔ケアに不安がある方は、かかりつけの歯科医へ相談するのがおすすめです。

    感染症は予防が大切!日頃から対策を

    かぜをはじめとした感染症の予防は、手洗いやマスクの着用など日頃から実践している対策の積み重ねが重要です。この機会にいま一度見直してみてください。
    コロナ禍でまだまだ油断できない日々が続きますが、病原体を寄せ付けない習慣を身につけ、予防に努めましょう。

    参考資料:
    • ※1厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の発生に伴う食品添加物製剤たる高濃度エタノール製品の使用について(改定(その2))」令和2年4月22日
      (http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20200422_02.pdf)
    • ※2厚生労働省:冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気について,2020年11月27日付
      (https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/000698849.pdf)
    • ※3Prather, et. al: Behaviorally Assessed Sleep and Susceptibility to the Common Cold. SLEEP 38(9): 1353-1359, 2015.
      (https://doi.org/10.5665/sleep.4968)
    • 厚生労働省Webサイト「新型コロナウイルス感染症について」
      (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164708_00001.html)
    • 厚生労働省:高齢者介護施設における感染対策マニュアル改訂版,2019.
      (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index_00003.html)
    • 厚生労働省新型コロナウイルス感染症対策推進本部:新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き 第5.3版(2021年8月31日改訂).
      (https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_00111.html#h2_free4)
    • 「腸内細菌と健康」
      (https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html)
    • 宮本,et. al.:腸内細菌脂質代謝産物に見いだされた腸管バリア保護機能――
      腸内環境から健康増進.化学と生物55(4):278-284,2017.P.278
      (https://doi.org/10.1271/kagakutoseibutsu.55.278)
    • 安藤朗:腸内細菌の種類と定着――その隠された臓器としての機能.
      日本内科学会雑誌104:29-34,2015.P.30
      (https://doi.org/10.2169/naika.104.29)
    監修:桜みちクリニック院長 永武 毅先生
  • 健康に欠かせない睡眠。実はウイルスや細菌に対する抵抗力(免疫力)を保つためにも大切であることをご存じですか。免疫力は睡眠中に維持・強化され、疲れをとったり、風邪などの病気の予防に役立つといわれています。風邪をひいてしまった場合も、余分な体力の消費を抑え、体が本来持っている免疫力を発揮するために睡眠は欠かせません。健やかな睡眠を保つことは活力ある日常生活を送るために重要です。ここでは専門家監修のもと、快適な眠りで免疫力を高めていくためのポイントなどをご紹介します。

    そもそも免疫って何?

    免疫とは、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体(異物)が体に入り込んだ際、それらを見つけ出し、体から取り除く仕組みのことを指します。自分の細胞と外から入ってきた異物を見極めることによって、自分の細胞は攻撃せずに異物だけを攻撃するという性質を持っているのです。

    免疫の種類と役割

    免疫の種類は、大きく自然免疫と獲得免疫に分けられます。

    <自然免疫>

    自然免疫は生まれながらに備わっており、ウイルスや細菌、寄生虫など病原体の特徴を捉えて、病原体が体内に入ってきたら即座に攻撃を始めます。自然免疫に関わる代表的な免疫細胞は下記の通りです。

    • マクロファージ:侵入した異物を取り込んで分解する
    • 好中球(こうちゅうきゅう):細菌やカビを攻撃する
    • NK(ナチュラル・キラー)細胞:病原体に感染した細胞を破壊する

    など

    <獲得免疫>

    獲得免疫は外から侵入した異物に反応して形成される免疫です。自然免疫で排除できなかった病原体に対し、免疫細胞を選んで感染した細胞を攻撃したり、病原体の特徴に合わせ1~2週間かけてつくった抗体を“武器”にして排除します。病原体の情報を記憶し、一度つくった抗体や選抜した免疫物質をいつでも使えるように備えることができるのも獲得免疫の特徴といえます。

    代表的なものに下記があります。

    • 樹状細胞:感染したことを知らせる
    • T細胞(キラーT細胞・ヘルパーT細胞・制御性T細胞):免疫を促進・制御したり感染した細胞を攻撃したりする
    • B細胞:抗体をつくる

    など

    免疫と睡眠の関係

    健康を保つためには、免疫機能の最前線で私たちの体を守っている自然免疫を維持し、その免疫力を高めておくことが必要です。ウイルスや細菌などの感染をきっかけに分泌される免疫物質(サイトカインというタンパク質)は睡眠を促進するとともに、睡眠自体も免疫物質(サイトカイン)の分泌を促進することが明らかになっています。風邪をひいた時によく眠ることで治りが早くなるのはこうした理由によります。十分な睡眠は免疫細胞の働きの強化につながるのです。逆に睡眠不足や睡眠の質が低下したことで、免疫力の低下や感染症の重症化リスクにつながるとの報告もあります。
    たかが睡眠不足と侮らず、免疫力の維持や向上に努められるよう、十分な睡眠を心がけましょう。

    睡眠不足や睡眠の質の低下と風邪との関連
    • *1Sleep. 35(1) 97-101. 2012
    • *2Sleep. 38(9) 1353–1359. 2015
    • *3Arch Intern Med. 169(1) 62-67. 2009

    免疫を高める睡眠のポイント

    良好な睡眠には「時間」も「質」も両方とも重要

    日本の成人の睡眠時間は6時間以上8時間未満が6割を占めており、2015年に米国の全米睡眠財団の調査報告によれば、これが標準的な睡眠時間と考えられています。夜間に実際に眠ることができる時間(一晩の睡眠の量)は、25歳で約7時間、45歳で約6.5時間、65歳で約6時間と、年齢を20歳とるごとに約30分ずつ減少していきます。また、日の長い季節の夏場では睡眠時間は短くなり、日の短い季節の冬場では長くなる傾向にあります。

    このように、睡眠時間は年齢や季節などによってまちまちです。また、必要な睡眠時間は個人によって異なるため、ある程度の時間が確保できていれば睡眠時間にこだわらなくて良いでしょう。むしろ重要となるのは「睡眠の質」です。

    では「質の良い睡眠」とはどのようなものなのでしょうか。
    4つのポイントでチェックするとわかりやすいかもしれません。

    • 寝つきが良い
    • 途中で目覚めることなく、ぐっすり眠れる
    • 目覚めがスッキリしている
    • 日中に眠気を感じない

    質の良い睡眠のために!今日から工夫できること

    睡眠の質を上げるためには、日頃の過ごし方が鍵となります。
    具体的な方法をご紹介しますが、全てを実践するのは難しいので、できることから挑戦してみてください。

    生活習慣の工夫

    • 寝る直前の入浴は避け(入眠の2~3時間前)、38~40度のお湯にゆっくりと入る。
    • 軽く汗ばむ程度の運動を習慣的に行う。
    • 就寝・起床時間は一定にして、体内時計のリズムを乱さないようにする。
    • 朝の光を浴びて、体内時計をリセットする。

    食事の工夫

    • 朝食をしっかりと食べて、睡眠と覚醒のリズムにメリハリをつける。
    • 睡眠の質向上を期待できる栄養素を意識的に摂取する。
      睡眠に良いと考えられる栄養素として、エネルギーを生み出し、疲労回復に役立つビタミンB群(ビタミンB1・B2・B6)、眠りに関与するアミノ酸グリシン・トリプトファン、神経を鎮静化する働きがあるカルシウム、緊張した体を緩和させる作用のあるマグネシウムが挙げられます。バランス良く摂取することを心がけましょう。
      注:これらの栄養素の中には過剰摂取のリスクにより摂取上限量が設けられているものがあります。
    • 寝る前の食事や寝酒、カフェインは控える。
      アルコールは眠りにつくのを一時的に促すものの、睡眠が浅くなり、熟睡感が得られにくくなります。また、カフェインには覚醒作用だけでなく利尿作用もあり、夜中に尿意で目を覚ます原因になるので控えましょう。

    睡眠環境の工夫

    • 寝る時は体への負担が少ない寝姿勢(自然な立ち姿勢時と比較して、腰のS字カーブのすき間が約半分・2~3cmの状態)を保ち、保温性と吸湿性・放湿性の良い寝具(掛け布団なら羽毛や羊毛素材)を使う。
    • 室温は冬は16℃前後、夏は26℃前後、湿度は50~60%程度に保つ。
    • 夜の明るすぎる光は体内時計を乱す原因になるため、照明は白っぽい昼光色ではなく、夕日色のようなやわらかい光に。

    睡眠に気をつけていても、風邪をひいてしまったら。風邪薬で早めに対処を!

    眠りを妨げない処方の風邪薬を活用するのも1つの方法

    健康を維持するうえで、睡眠は脳や体の疲れをとり、傷ついた細胞を修復するためにも必要不可欠な休息です。風邪をひいてしまった場合も、余分な体力の消費を抑え、体が本来持っている免疫力を発揮するために睡眠は欠かせません。

    しかし、風邪の代表的な症状である咳、鼻づまりなどがひどいと、寝つけない・寝苦しいなど、眠るのもひと苦労することがあります。睡眠に支障がでる場合は市販の風邪薬を活用し、症状を緩和できるよう対処しましょう。
    ただ、風邪薬の中には眠気を妨げる作用がある成分を含むものがあります。例えば、カフェイン類(カフェイン・無水カフェイン・安息香酸ナトリウムカフェイン等)には、解熱鎮痛成分と一緒に働くことで痛みを和らげる作用が強まるという働きがありますが、一方で眠気を妨げてしまうことも。十分な睡眠をとり、体力を回復できるよう、就寝前は眠気を妨げる成分を含まないなど眠りに着目した風邪薬を選ぶのも良いでしょう。

    参考資料:
    • 内山真編「睡眠障害の対応と治療ガイドライン 第3版」, 2019(じほう)
    • 厚生労働省 健康づくりのための睡眠指針2014 p5
      (https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000047221.pdf)
    監修:青山・表参道睡眠ストレスクリニック院長 中村 真樹先生
    • 効き目と睡眠で早めの回復へ
      せき・のどの痛み・鼻づまり・
      熱によく効くかぜ薬。ノンカフェイン。

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  • 風邪(かぜ)や感染症(急性下気道感染症など)にかかった場合などに、夜に咳(せき)が止まらず眠れないという経験をした方は多いでしょう。ここでは専門家監修のもと、夜に咳が出やすくなる原因や眠れないときの対処法などについて紹介します。

    なぜ夜に咳(せき)がひどくなりやすい? 考えられる原因

    咳は空気の通り道・気道内にあると困る食物や痰、ほこりやウイルスといった異物を外に出し、呼吸を楽にするための体の反応です。鼻の中やのど、気管、気管支などの粘膜にこうした異物が付着すると咳センサーが反応し、刺激が神経を経由して脳にある咳中枢に伝わり、咳中枢から神経を介して横隔膜などの筋肉に到達して咳を促します。
    また、気道内だけでなく気道を取り囲む筋肉の中にも咳センサーがあり、筋肉の収縮が起こると刺激され、咳が誘発されます。筋肉の収縮による咳は、咳喘息(せきぜんそく)や気管支喘息の患者さんに多く見られます。

    自律神経(交感神経・副交感神経)の影響

    気管支の弛緩と収縮は自律神経(交感神経・副交感神経)によって制御されています。交感神経は体を活発に動かすときに、副交感神経は体を休めるときに働いており、これらがバランスを取りながら体の状態を調節しているのです。夜間、体を休めるときに副交感神経が優位に働くと、気管支の筋肉(平滑筋)が収縮し、気道が狭くなり呼吸が抑制されます。このように昼夜で変化する自律神経の作用が、夜に咳が出やすくなる一因と考えられます。

    冷たい空気や乾燥による気管支の刺激

    何らかの原因で気道が敏感になり、冷たい空気や寒暖差などに反応することによって咳が起こりやすくなります。また、睡眠中の口呼吸やエアコンなどの影響でのどが乾燥し、気管支の粘膜が刺激されることでも咳が出やすくなることがあります。

    咳(せき)がひどくて眠れない夜に。症状を和らげる対処法

    水分を摂る

    水分はのどをうるおし、通りを良くしてくれます。咳に痰が伴う場合は、水分で痰がやわらかく排出されやすくなります。
    特に高齢の方は体内の水分量が少ない上に、のどの渇きを自覚しにくいので、意識して水分補給をしましょう。その際、むせないように、少しずつゆっくり飲むようにしましょう。
    咳の症状がひどい場合は体力を消耗しやすいため、エネルギー補給をしっかり行うとともに、粘膜の健康維持を助けるビタミンA・B2・Cも意識的に摂りたいところです。レモネードやゆず茶などのハチミツを使った飲み物は、咳症状の改善と体力回復の両方に有用といわれており、おすすめです※1
    また、熱があるときは、発汗によって水分だけでなくミネラル分も失われるため、経口補水液やスポーツドリンクなどを利用するのが望ましいといえます。

    • ※1ハチミツは乳児ボツリヌス症のリスクがあるため、生後1歳未満の赤ちゃんには与えないでください。

    部屋を加湿する

    のどの乾燥を防ぐために、加湿器を使ったり、濡れた洗濯物やタオルを部屋に干すなどして、室内の湿度を調整しましょう。

    部屋の温度を上げる

    冷たい空気が刺激となることもあるため、室内の温度が低い場合には、部屋を暖かくすることもいいでしょう。特に寒い時期は、加湿と併せて室温にも気を配るようにしましょう。

    症状緩和のために市販薬を使う

    異物や病原体から肺などの呼吸器を守ってくれる咳は、少しであれば気道の通りを良くする方法などとして健全なものといえます。しかし、強い咳や長く続く咳は気道を刺激し、気管支が収縮することでその内側に炎症を起こすことがあります。また、体力も消耗してしまい、風邪の悪化につながることもあります。体の負担を軽くするためにも、早いうちから症状を緩和することが重要です。市販薬の活用はその有効な選択肢の一つになります。

    咳(せき)や痰(たん)、のどの痛みに有効な成分の例

     働き代表的な成分例
    鎮咳成分脳にある咳中枢に働きかけることで、咳の発生を緩和する
    • デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物
    • ジヒドロコデインリン酸塩
    • ノスカピン塩酸塩水和物
    気管支拡張成分交感神経を刺激し気管支を拡張させることで、呼吸を楽にして咳の症状をやわらげる
    • dl-メチルエフェドリン塩酸塩
    去痰成分気道の粘膜から分泌される粘液の量や質に影響を与え、痰を出しやすくする
    • グアイフェネシン
    • L-カルボシステイン
    • ブロムヘキシン塩酸塩
    抗炎症成分炎症に関わる物質の作用を抑えることで、気道の炎症を抑え、のどの腫れ・痛みをやわらげる
    • トラネキサム酸
    • グリチルリチン酸
    解熱鎮痛成分体温を調節する仕組みや痛みを伝達する仕組みに作用して発熱やのどの痛みをやわらげる働きを持つ
    • イブプロフェン
    • アセトアミノフェン

    また、鼻水の症状もともなっている場合、鼻水を抑える働きを持つ抗ヒスタミン成分(ジフェンヒドラミン塩酸塩やd-クロルフェニラミンマレイン酸塩など)※2が配合された市販薬を利用するのがおすすめです。鼻水がのどに流れこんで気管の周りにつくと、その刺激でのどに炎症を起こし、咳がでたり、痰のようになって違和感を感じる原因になります。

    市販薬を使用しても症状が良くならない場合や、2週間以上咳が続いたり、眠れないくらい咳がひどかったりする場合は早めに病院に行き医師の診断を受けましょう。喘息や、さらには重大な呼吸器疾患の可能性があります。

    • ※2服用後、眠気があらわれることがあるため、乗物または機械類の運転操作をしないようにしましょう。

    知ってトクする、市販薬を選ぶポイント

    眠りを妨げない市販薬にも着目

    市販薬には、例えばカフェイン類のように眠気を抑える作用を持つ成分が入っているものがあります。しっかりと睡眠をとって体の免疫力を高め、体力の回復に努めるという点では、こうした眠気を妨げる成分を含まない薬を選ぶのも一つの考え方といえるでしょう。

    参考資料:
    • 日本呼吸器学会:咳嗽・喀痰の診療ガイドライン 2019.メディカルレビュー社,2019.
    • 松瀬厚人「危険な咳・そうでない咳の見分け方」(文光堂, 2017)
    • 厚生労働省:試験問題作成に関する手引き(平成30年3月)
    監修:小田原医師会 永武 毅先生
    • 効き目と睡眠で早めの回復へ
      せき・のどの痛み・鼻づまり・
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  • かぜの症状などで両方の鼻がつまると鼻呼吸が十分にできないため、寝苦しい経験をした人も多いはず。また口呼吸によるのどの乾燥や頭痛を招いてしまう恐れもあります。専門家監修の元、できるだけ早く治したい鼻づまりについて、原因や対処法を解説します。

    なぜ夜に鼻づまりが起こりやすい?考えられる原因

    鼻づまりは、鼻粘膜の血流が増加して腫れたり、過剰な鼻水により鼻腔が狭くなることによって起こります。鼻づまり症状の原因はさまざまですが、ここでは夜につまりやすくなる原因について紹介します。

    自律神経(交感神経・副交感神経)の影響

    鼻粘膜の末梢血管は自律神経の影響を強く受けています。自律神経には交感神経と副交感神経という相反する作用を持つ2つの神経があり、体を活発に動かすときに働く交感神経と、体を休めるときに働く副交感神経がバランスを取りながら体の状態を調節しています。
    鼻粘膜の末梢血管は、夜になると副交感神経が優位になり拡張されます。そのことで粘膜が腫れ、鼻づまりの症状が起こりやすくなるのです。

    冷気による刺激

    外気の急激な温度変化や夜間に室温が低い場合などは、冷気による刺激が副交感神経に影響し、鼻水や鼻づまりなどの鼻症状を引き起こすことがあります。

    鼻づまりが苦しく眠れない夜に。症状をやわらげる対処法

    鼻を温める

    寒い日が続く季節は、血行不良により鼻の粘膜に血液がたまって鼻腔(鼻の内部)が狭くなるので鼻づまりが増えます。血行を改善し鼻腔を広げるために、鼻を温めることは簡単で即効性の高い方法です。温めたタオルを鼻の上に当てると、蒸気が鼻の中に取り込まれ鼻の通りが良くなります。

    体を温める

    冷気による刺激で鼻症状が現れた場合は、体が感じる寒暖差をなくすように工夫しましょう。特に首には太い血管が通っているので、温めることで顔まわりの血流が促され、症状が起こりにくくなります。

    部屋を加湿する

    鼻の粘膜は細菌やウイルスなど異物が体内に入るのを防ぐ役割があります。中でも鼻水は、鼻の中に入ってきた異物を外に洗い流す役割があるのですが、室内が乾燥していると鼻水の水分が奪われ、その防御機能が低下してしまいます。加湿器を使ったり、洗濯物や濡れたタオルを部屋に干したり、カーテンに霧吹きをかけたりして、室内の湿度を調整しましょう。湿度の目安は50~60%です。

    わきの下を圧迫する

    液体の入ったペットボトルなどを、つまっている鼻の反対側のわきに挟んで20~30秒間グッと力を入れることで、多くの場合、鼻の通りがよくなることがあります。これは圧迫によって体の反対側にある交感神経が刺激されることによります。両方がつまっている場合は片方ずつ交互に行ってみてください。

    寝る姿勢の工夫

    ペットボトルなどを使って体の側面を刺激する方法と同じ原理で、寝るときに鼻がつまっている側を上にして横向きに寝ると、下側のわきが圧迫されて鼻の通りが良くなることがあります。
    また、鼻づまりは頭を少し起こしている方が楽になることがあります。枕やクッションなどを工夫して、上半身を少し上げた状態で寝るのも一つの方法です。

    症状緩和のために市販薬を使う

    鼻水や鼻づまりなどの症状は病原体から体を守るための防御反応です。しかし、鼻づまりになって口での呼吸が増えると、乾燥した空気がそのまま体内に入るため、のどなどでウイルスが繁殖しやすくなります。
    もし、かぜをひいてしまったら、睡眠をしっかりとって体力の回復に努めることが大切です。
    しかし、鼻づまりなどかぜ症状がつらくて眠れないと、かぜが長引いてしまったり症状の悪化につながる可能性もあることから、市販のかぜ薬などを使って、早い段階から症状を抑えることも検討しましょう。

    鼻づまり(かぜの諸症状)に有効な成分の例

     働き代表的な成分例
    抗ヒスタミン成分アレルギー症状を引き起こす神経伝達物質の一種、ヒスタミンの働きを抑え、鼻水・鼻づまりをやわらげるジフェンヒドラミン塩酸塩、d-クロルフェニラミンマレイン酸塩、ケトチフェンフマル酸塩など
    交感神経興奮成分鼻粘膜のうっ血状態を改善し、鼻づまりをやわらげるプソイドエフェドリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン、ナファゾリン塩酸塩など
    副交感神経遮断成分神経伝達物質の一種、アセチルコリンの働きを抑え、鼻水の分泌を抑制するヨウ化イソプロパミド、ベラドンナ総アルカロイドなど

    市販薬には、例えばカフェイン類のように解熱鎮痛成分の効果を高める働きがある一方で、眠気を抑える成分が入っているものがあります。睡眠をしっかりとって体力の回復に努めるという点では、そういった成分が含まれていないものを選ぶのも一つの方法です。
    また、市販薬では症状の緩和や改善が見られないときは、医療機関での治療や手術が必要な場合ががあります。早めに受診するようにしましょう。

    参考資料:
    • 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
      (http://www.jibika.or.jp/citizens/daihyouteki2/hana_condition.html)
    • 近藤健二:鼻炎の病態生理と神経反射.耳鼻咽喉科免疫アレルギー35(3):261-265,2017.
    監修:小田原医師会 永武 毅先生
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  • ジフェンヒドラミン塩酸塩をはじめとする抗ヒスタミン成分には、鼻水や湿疹・かぶれなどのアレルギー症状やかぜにともなう鼻症状を緩和する働きがあり、かぜ薬などの市販薬に含まれています。ここでは、ジフェンヒドラミン塩酸塩の特徴や服用するにあたっての留意点、どのような場合に使用するのがよいのかなどをご紹介します。

    ジフェンヒドラミン塩酸塩ってどんな成分?作用と特徴

    鼻症状を抑える「抗ヒスタミン成分」

    かぜウイルスが鼻の粘膜に付着し感染すると炎症を起こし、ヒスタミンの放出が起こることでかぜ症状に関与するとされています。ジフェンヒドラミン塩酸塩は、このヒスタミンの働きを抑える抗ヒスタミン成分の一つです。
    抗ヒスタミン成分は、鼻水やくしゃみなどの鼻症状や、痒みなどの皮膚症状を緩和する作用もあり、次に挙げるような多くの市販薬に配合されています。

    • 総合感冒薬(かぜ薬)
    • 鎮咳・去痰薬
    • アレルギー用薬
    • 眼科用薬
    • 鼻炎用内服薬
    • 外用鎮痛消炎薬
    • 外用殺菌消毒薬
    • 化膿性皮膚疾患用薬
    • アレルギーを引き起こす化学伝達物質のこと。体内に広く分布している。

    鼻症状を抑えるメカニズム

    ヒスタミンは、気管支や鼻粘膜、皮膚などにある肥満細胞(マスト細胞)でつくられる化学伝達物質の一種です。細菌やウイルス、食物、ダニ、花粉などの原因物質が抗原(アレルゲン)となり、その刺激によって肥満細胞からヒスタミンが放出されます。それが血管内皮細胞や筋肉、神経細胞などにあるヒスタミン受容体と結合し、神経や血管に作用することによって鼻水やくしゃみなどの鼻症状が誘発されます。かぜによる鼻炎の場合にもヒスタミンの放出が起こり、症状に関与するといわれています。
    ジフェンヒドラミン塩酸塩は、ヒスタミン受容体と結合することでヒスタミンが結合するのをブロックし、引き起こされるさまざまなアレルギー症状を抑えます。鼻症状の場合は、鼻粘膜にある受容体と結合するのを阻害することによって炎症を抑え、鼻水やくしゃみ、鼻づまりを緩和します。

    • ヒスタミンを抑制することによって、中枢神経の働きも抑止するため、眠気を催す。

    注意したいこと

    ヒスタミンが脳の中にあるヒスタミン受容体と結びつくと、目覚めさせる働き(覚醒作用)や活性化を促す働き(賦活作用)が生じます。抗ヒスタミン成分を摂ることによって、ヒスタミンがヒスタミン受容体と結合するのをブロックするため、眠気などの鎮静作用が現れることがあります。
    ですから、抗ヒスタミン成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩が配合されたかぜ薬を服用した後は乗り物の運転はしないように心がけましょう。できるだけ体をゆっくり休めることが大切です。

    また、ジフェンヒドラミン塩酸塩は授乳中の方が服用してはいけない成分の一つです。服用する場合は授乳を行わないようにしましょう。さらに、前立腺肥大などで尿が出にくい方、緑内障の症状がある方は使用できませんので注意してください。

    ジフェンヒドラミン塩酸塩の配合薬を選ぶポイント

    ジフェンヒドラミン塩酸塩の特徴は、鼻水などの鼻症状に対し効果を発揮すること、中枢神経の働きが抑えられることにより眠気をともなうことがある点です。かぜをひいたときには、睡眠をはじめ十分な休息をとることが大切です。かぜ薬を選ぶ際には、「体を休める」という点を考えることもポイントの一つといえるでしょう。その意味では、鼻症状は睡眠を妨げる症状の一つなので、かぜ薬で早めに対処することや、睡眠を妨げる成分であるカフェインが入っていないものが望ましいといえるでしょう。

    参考資料:
    • 日本薬学会編「知っていおきたいOTC医薬品 第3版」(東京化学同人)
    • OTC薬ガイドブック第3版(じほう)
    • 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会「アレルギー性鼻炎ガイド」
      (https://allergyportal.jp/documents/bien_guide_2021.pdf)
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